忍者ブログ
2025/05/14  [PR]
 

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


「俺は、カカシ先生が好きです」
逃れられないカカシ先生の腕の中で叫んだ。
カカシ先生の体が強張る。
「ちゃんと好きです。誰よりも、ナルトよりも、ずっとずっと大切に想ってます」
言いながら、ああ俺ほんとに「好き」ってちゃんと言ったことなかったんだとわかった。
カカシ先生から体を少し離し、正面から顔を覗いた。
「ずっと言わなくてごめんなさい。でもあんたも悪いんですよ。俺の気持ち聞く前に自分ばっかり突っ走ってしまうから」
言いながら、だんだんと照れてきた。
赤くなりながらも、今ちゃんと伝えないと駄目だというのはわかった。
じゃないとまたこの男は自分の考えに沈んでしまう。
カカシ先生は目を開いて俺を見ていた。
(写輪眼まるだし)
そういえば、この部屋に飛び込んできた時からこの男は額宛をずらし両目を露にしていた。口布を取り払い、肩で呼吸をしていた。
今更ながらどれだけ急いでこの男が自分の元に戻ってきたかがわかった。
「あまり無理をしないでください。あんたが思うよりもずっと、俺はあんたが好きなんですから。何処にも逃げはしません」
ほんとに子供みたいだと思った。
図体ばかりがデカくなってしまった子供。己の力を持て余し、どうしていいかわからず途方に暮れている。
不安ばかりが先走り、検討違いな方向に突っ走ろうとして。
「バカな結界なんて張って。あんたチャクラ切れ起こしたらどうするんです」
「・・・でも」
「心配しました」
「・・・・・・はい」
「もうこんなことはしないでください」
カカシ先生の目が悲しげに揺れた。
「駄目ですか?俺は、あなたを独り占めすることは出来ませんか?」

どうすれば、この男は理解するのだろう。
何を言えば、この男に伝わるのだろう。

あなたの悲観はまるで的を得ないのだ。どうしてわからない。俺はあなたの側に居るというのに。あなたに愛を捧げているというのに。
伝わらないもどかしさに胸が詰まる。

どうして、俺はこの男を安心させてやれないのだろう。
どうして、この男に伝わる言葉を持っていないのだろう。

カカシ先生の指が何度も何度も俺の頬をなぞる。
(何を考えてるんだ)
頬に当てられた手に自分の手を重ねた。
灰色だかった青い瞳が切なげにまたたく。銀色の睫が弱く震えている。
「バカ」
慰めたいはずなのに、口からは正反対の言葉が出てきた。
カカシ先生はそれに頷く。
(あ~~もう!!)
頭を掻き毟りたい気分だ。
苛立ちまぎれにカカシ先生の手を採り引っ張った。
驚く程あっさりと俺の胸に倒れこんでくる。
見た目よりも随分逞しい肩を抱きしめ、さて、どうするかと思案する。

まるで子供みたいな男。けれど、子供でないのは知っている。
この男の見てきた世界、凄惨たる世界を見ているだろうにも関わらず今存在している事実が何よりも男の強さを証明している。
なのに、子供のようなこの一心不乱さはなんだろう。傲慢なまでの一途さを一体何とすればいいのだろう。
子供のような独自の価値観で世界が回る。
自分が世界の中心だといわんばかりに揺ぎ無い心で周りを振り回す。

ああ、そうだ。

振り回されるしかないのだ。

男は笑うと俺は嬉しい。
男が怒ると俺は悲しい。ムカつくが、なんとか宥めようと必死になる。
男が泣くと俺は心配になる。不安になる。切なくなる。

結局、男は何をしても俺は心穏やかではない。

「俺はあなただけのものです」

カカシ先生の肩が小さく揺れる。その動きすら愛しい。
顔をあげさせると、不安げな目に覗き込まれた。けれど、先ほどまでの悲観の色は薄れ、期待の混じった光が灯っている。
胸の奥から何かこみ上げてくる。嬉しさや、安堵。

「俺の言葉を信じてください」

少しでもいい、この男の悲しみを取り除いてやれるなら。

「こんなに・・・あなたに取り乱されている俺を、疑わないでください」

言葉で伝わらないのなら。
一度歯を食いしばり、カカシ先生に唇を贈った。
何度か軽く口付けていると、途中からはっきりと意思を持った手に背中を撫で上げられた。
「・・・嫌じゃないですか?イルカ先生、俺とこういうことするの、嫌じゃない?」
ああ、と。思わず悲観のため息が漏れそうになった。
もしかしたらと思っていたが、この男、俺に触れるのすら実は躊躇っていたのか。だからいつもあんなに強引に持ち込んでいたのか。
「嬉しいです」
男の目を見てはっきり告げると、これ以上にない力で抱きしめられた。


抱き合いながら、好きだと、何度も繰り返した。
途中罵りの言葉も吐いたかもしれない。あなたが居なくて不安だったと。嫌われたのではないかと恐怖したと。どうして一人にしたのかと。
それでも、カカシ先生は嬉々としてその言葉を聞いていた。

 


「イルカ先生、はい、あーん。ねぇったら、あーーん」
(・・・・絶対開けねぇ)
ぐいぐいと口に押し付けてくる卵焼きを入れるもんかと必死で唇を引き結んだ。
カカシ先生はいつもの如く俺の膝の上に乗り上げている(重い)。
「あーーんってしてよ!!」
無視してそっぽを向くとカカシ先生がヒステリックに叫んだ。
「ちょっと口あけてくれるだけでいいのに!!イルカ先生ったら!ほら、あーーーん!!!」
結局、何も変わらなかった。
俺があの親子に学んだ「人の振り見て我が振り直せ」作戦は全く効果がなかった。
それどころか・・・、

(パワーアップしてやがる・・・!)

カカシ先生はそっぽ向いた俺の顎を無理やり戻し、尚且つ無理やりこじ開けようとしている。
以前は無視すると泣きくれていたのに、今は更に挑んでくる。
要するに自信がついたのだろう。
俺の愛を確信したカカシ先生は、これまで以上に我侭になった。
そして俺ときたら・・・・、あの晩に見たカカシ先生の姿に心打たれ、どうもカカシ先生に強く反撃できない。
以前のように膝に乗りあがるカカシ先生を蹴り倒したりできなくなってしまった(可哀相で)。
こじ開けられた口に卵焼きをねじ込まれる。
ムカつきながらもしょうがないから咀嚼した。
「おいしいでしょ?」
カカシ先生がニコっと笑う。

(ああもう可愛いなあ)

どんなことをされても、その笑み一つで許してしまいそうになる。
最近、ふと思うことがある。
もしかすると、俺の好きの気持ちの方が大きいのではないだろうか。
それを嫌だとは思わなかった。むしろ優越感すら感じる。
この男はまだまだまだ理解していない。
俺がどれほどの愛を持っているか。

愛してます。

いつか言うであろう言葉が確かに胸の奥にある。

 

(完)

PR
この記事にコメントする

name
title
color
URL
comment
password
prev  home  next
カレンダー

04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新コメント

[02/13 あすか]
[06/04 ネリ]
[06/04 ネリ]
[06/04 あずみ]
[06/04 あずみ]
カウンター

忍者ブログ [PR]
  (design by 夜井)