目を覚ますとまだ辺りは薄暗かった。
そっと体を起こすと途端に布団の中から長い腕がのびてくる。
その腕に巻き取られるように布団の中に引きずり込まれながら、そっと声をかけてみた。
「カカシ先生?」
反応はない。
熟睡しているみたいだ。
無意識であろうカカシ先生の行動に知らず笑みが洩れる。
(愛されてるなあ)
付き合いはじめてかれこれ3ヶ月になるか、カカシ先生は最初と変わらずむしろ最初よりも熱烈に俺に情熱を捧げてくる。
誰かにここまで好かれるのはもちろん初めてなので戸惑いもするが、悪くない。嬉しいとすら思う。
(だけどなあ・・・)
正直言って困っているのが現状だった。
はたけカカシは非常に我侭な男なのだ。
同僚や生徒達にすら嫉妬し俺を束縛したがる。仕事以外で同僚と飲みに行くなど言語同断。ちょっとでも帰りが遅くなると異常な程
心配する(というか迎えにくる)。思い込みが激しく我が道をつっぱしるくせに繊細。
それに加えて、暇さえあればセックスを求めてくる。
しかもちょっとでも拒絶すれば逆ギレを起されそれこそ夜も眠らせて貰えない。
恋人同士の可愛い我侭どころの騒ぎではないのだ。
カカシ先生には、そういう行為を止めて欲しいと注意するが、まったく聞く耳もっちゃいない。
「はい」と良い子の返事だけはしといて2秒もたてばすぐにまとわりついてくる。
子供みたいな人だからと自分に言い聞かせても、上忍の力は持っているんだから厄介だ。
口で言っても駄目。言い過ぎたら逆ギレを起される。だからと言って力ずくでどうこう出きる相手ではない。
俺は日々疲れ果てていた。
そんな時偶然目にしたのがあの親子喧嘩だ。
娘の我侭を父親は実にうまく制していた。
目には目を、歯には歯を。
我侭には我侭を。
「試してみるか」
カカシ先生の日頃の我侭にどれだけ被害を被っているかカカシ先生自身に経験させてやろう。
好きだからこそ、カカシ先生に我侭を言われるのが辛い。
無理をしてでも叶えてあげたくなってしまうのだ。
しかし叶えるにも限界がある。
朝出勤する度に足元に縋りつかれて「行かないで!」と叫ぶカカシ先生を置いて家を出るのは実は断腸の思いなのだ。
「見てろよ」
隣で幸せそうに眠るこの男、俺が我侭放題したらどのような反応をするだろうか。
(続)