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2025/05/14  [PR]
 

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いつものアカデミーからの帰り道、夕飯の買い物に寄った商店街で俺はそれを偶然目にした。

「パパのわからずや!ピアスのどこが悪いっていうのよ!!」
「悪いものは悪い」
「友達みんなしてるもの!私だけ仲間外れだわ!!」
「そんなことぐらいで仲間外れにするような友達は友達じゃない」
「も~~~~~っ、そういうことじゃない~~~~!とにかく!いいでしょ!ピアスしたって!!」
「駄目だ」

混み合う夕暮れ時の商店街を、親子と思われる中年の男とまだ年端もいかない若い娘が早足大声をあげながら通り過ぎていく。
肩で風を切るように歩く二人に、通りの者は皆道をあけ興味ありげに二人の言動を見守っていた。
よくある親子喧嘩だろう。
娘がピアスをするのに父親は反対しているようだ。
なるほど父親は見るからに頑固親父というような風貌で、娘の言い分に聞き耳持たないという所か。
「パパのバカ!もう勝手にするから!!」
娘は更に大きな声をあげ足を止めた。
丁度俺の斜め前くらいだったので娘の表情までよく見えた。
娘の言い様に父親の足も止まる。
「そうか」
振りかえりながら父親はグっと娘を睨んだ。大きな声ではなかったがとても迫力がある。
野次馬連中も皆その父親の迫力に何事かと押し黙った。
娘の方はといえば慣れているのか父親の迫力にもめげずツンとそっぽを向いていた。
しかし、次の父親の一言で娘は愕然とした。

「おまえがピアスをするのなら、俺もする」

は?

娘共々野次馬連中皆ポカ――ンとしてしまった。

「おまえと同じようなピアスをしよう。おまえは花を模った大ぶりのピアスをするのだと言っていたな。俺もそれをつける」

は?この頑固親父がお花のピアス?


それはキツイなぁ・・・・・。


この父親を見て思うことは野次馬連中皆一緒だろう。
案の定娘は泣きべそをかきはじめた。
「やぁだぁ~~~~~!!!も~~~~!!!」
「ほら、帰るぞ」
「パパのばかぁ!!」
「うるさい、さっさと来い」
父親はしてやったりという表情で歩き始めた。娘もその跡をグズグズ言いながらついて行く。
この勝負、父親に軍配があがったのは明かだ。
俺は二人の後ろ姿を呆然と見送った。

「これだ・・・・!」

今の二人のやり取りは俺にとって天啓のようなものだった。


「イルカせんせ、あーーん」
「カカシ先生、あの、自分で食べれますから」
「いけず言わないで、はい、あ~~ん」
あぐらをかいた俺の上に当り前のように横抱きに乗っかるこの男、嬉しそうにニコニコ笑いながら俺に熱々の大根を箸でつまんでさしだしている。
間違っても食事をするような状態ではない。
しかも赤ん坊じゃあるまいしなぜ食べさせてもらわなければならないのだ。
意地で口を閉じていると、カカシ先生は構わずグリグリと大根を俺の口へと押しつけた。
「ぅお、あっちぃ!!」
大根のあまりの熱さに乗っかるカカシ先生を横へふっとばしてしまった。

ドゴォ!

鈍い音がしてカカシ先生がアパートの薄い壁に激突する。
あ、やべえ。
やりすぎたかなと思ったが、俺の唇も火傷しているだろうのでお互い様だ。
「・・・イルカせんせい」
「なんですか?カカシ先生も早く食べなきゃ飯さめますよ」
チラリと見やるとカカシ先生は今にも泣き出さんばかりに顔を歪めて俺に突進してきた。
(ギャ!!)
「ヒドイヒドイヒドイ!あんたどうしてそんなにヒドイの!飯じゃなくて冷めてるのはイルカ先生の俺への愛情だよ!そーだ!
 きっとそうなんだ!もう俺のことなんか嫌いなんだ!!」
避ける暇もなく突進してきたカカシ先生にそのまま押し倒されてしまった。
カカシ先生は俺の胸に顔を埋めてヒステリックに喚き出す。
毎度のことだが上忍の腕力でギュ―ギュ―と体を締めつけられなおかつあの剛毛でグリグリと胸を擦られるのでたまったもんじゃない。
痛すぎる。
「はなして、くださ・・・」
身をよじると拘束はもっと強くなった。
「ッ!!!!逃げるの?!どうして?!そんなに俺のことが嫌い?!」
いや、嫌いとかの問題じゃない。
カカシ先生のことは好きだ。嫌いなんてことは絶対ない。
けれど好きだからと言ってなんでも受け入れられるわけではない。
「イルカ先生のバカバカバカ!!」
カカシ先生は声に合わせて俺の胸を拳で叩いてきた。
(・・・死ぬ)
このままじゃ肋骨折れてそれが肺に突き刺さって死ぬ。
「やめろ・・・っ!!」
なんとか押しのけると、カカシ先生は真っ白な顔をして俺を凝視していた。
元から顔色がよくないので今はまるで死人のようだ。
「・・・やっぱり、俺のことなんか嫌いなんだ・・・・」
「・・・だから!」
好きだと続けようとしたが、また押し倒されてしまった。
今度は両手を人括りに頭上で拘束され、ロクな抵抗が出来ない。
「誰か他に好きな人ができたの?俺はもう用済み?」
違うと言いかけた口はあえなくカカシ先生によって塞がれた。
「・・・ぅ、ぐっ」
「駄目だよ、絶対駄目。許さないからね。あんたを他の男になんてやらない。他の男にやるくらいならあんたを殺して俺も死んでやる!」
そんなおっかない台詞を吐きながらカカシ先生の顔は涙でグチャグチャだった。
「こんなに好きなのに、愛してるのに!ああもう好き!!」
好き好き言いながらカカシ先生は俺の体をまさぐり出した。
(今日もか・・・)
胸元で揺れ動く銀色の髪を見ながら俺は観念して体の力を抜いた。

(続)

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